テーマが決まったら研究開始?
研究テーマをふるいにかけて、良さそうなのを見つけました!
さっそく、調査開始だ!
ちょっとまって!
ふるいにかけた後は、洗練させる必要があるよ!
「1. 研究テーマをみつける」で、集めたテーマを文献検索して、ふるいにかける(新規性の確認、違う視点での研究実現性)必要があるとお話しました
この文献検索をするときに、テーマに対して明らかになっていること、不明なことをしっかり把握しておきましょう!また、検索した文献はまとめて保管しておきます!
学会発表や論文投稿の、緒言や考察・引用文献を記載する際に役立つからです
さて、ふるいにかけた(新規性のある)テーマが、実際に研究していくことが可能か判断する必要があります。
まずはPECO(またはPICO)で、研究を具体化します
次に、FINER または FIRM2NESSを用いて計画の肉付けをしていきます
研究テーマを洗練させる:③PECO / PICOで具体化する
PECO(またはPICO)とは、研究内容を明確化するためのツールです
Patient, Exposure, Comparison, Outcomeの頭文字をとっています
PECO / PICOの意味は?
Patient:どんな対象者に
選んだ研究テーマに適合する対象者、逆に除外する対象者を検討します
できるだけ、対象者の条件を絞っていきます
例えば、「高血圧の患者さん」だけに設定しないようにしましょう
さらに条件を絞るとすると、①血圧が高くなっていく40歳以上の男女を対象(対象にする条件)とし、②腎不全や脳疾患の既往がなく(あれば対象より除外する条件)、③薬の効果が安定する6ヶ月以上の期間を継続内服(対象にする条件)している患者さん…
というように、「対象にする条件」「除外する条件」を検討していきます
Exposure / Intervention:どんな要因/介入があると
観察研究ではExposure(暴露・要因)
介入研究ではIntervention(介入)と異なります
観察研究:Exposure
●研究を意図した介入がなく、あるがままの経過を調査する研究です
例)副作用が出たA群と、副作用が出なかったB群で比較する
介入研究:Intervention
●研究を意図した介入があり、その結果を調査する研究です
例)新しい指導方法を実施したA群と、指導のないB群を比較する
Comparison:なにと比較して
本当に効果があったのか検証するために、比較する群も必要です
例えば、薬Xを服用したA群と、薬Xを服用していないB群の下痢発生率を比較する
何と何を比較するのか明確に決めます
Outcome:どのような結果になるか
研究テーマから、メインとなる結果(主要評価項目)を予想します
また、2~3つ目の結果(副次評価項目)も検討します
●主要評価項目(Primary Endpoint/一次エンドポイント)
その研究で最も明らかにしたい、主張したい項目
通常、ひとつだけ設定される
●副次評価項目(secondary Endpoint/二次エンドポイント)
主要評価項目を補足したり、関連する別の項目
通常、複数(2~3つ)が設定される
PECO / PICOの例
具体例をみていきましょう
研究テーマ:降圧薬Aと降圧薬Bは、Bの効果が高い気がする
Patient:高血圧の患者(40歳以上、腎機能正常者、半年以上を内服した症例)
Exposure:降圧薬A、降圧薬Bのいずれか(併用は除外)
Comparison:降圧薬Aと降圧薬Bの血圧低下幅を比較する
Outcome:降圧薬Bは血圧低下幅が大きい(主要評価項目)
これで、研究の根幹は具体化されました
研究テーマを洗練させる:④FINERとFIRM2NESS
PECO / PICOで研究内容を具体化しました
次は、FINERまたはFIRM2NESSで洗練していきます
FINERとFIRM2NESS
ツールが2種類あります
FINERは、研究テーマをより洗練させるチェック項目です
FIRM2NESSは、FINERにチェック項目を追加したものです
どちらを使用しても構いません
個人的には、FINERでチェックすることが多いです
【FINER】
【FIRM2NESS】
研究テーマが確定したら
・積極的に指導者や研究仲間に確認してもらう
→ミス防止や偏った考えを修正してもらえる
・倫理委員会に提出して承認をもらう
→病院勤務であれば院内の委員会に提出
クリニックや保険薬局勤務では、外部(薬剤師会、学会など)に申請も可能です
まとめ
- PECO / PICOで具体化する
- FINER / FIRM2NESSでチェックする
- 指導者や研究仲間に確認してもらう(ミス防止、偏った考えの修正)
参考文献
- 片岡裕貴,青木拓也. 実例から学ぶ!臨床研究は「できない」が「できる!」に変わる本 (羊土社, 2021)
- 辻本哲郎. これで解決!みんなの臨床研究・論文作成 (医学書院, 2021)
- 福原俊一. 臨床研究の道標 第2版(認定NPO法人 健康医療評価研究機構, 2017)
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