転職先の見るべきポイント【病院編】

さまよう薬剤師

病院薬剤師 13年、保険薬局2年を経験。
がん薬物療法認定薬剤師、医療薬学専門薬剤師の認定を取得。
筆頭論文は邦文で4報、学会発表は10回報告済。
研究や転職についてわかりやすい記事を書いていきたいと思います。なにかあればご連絡ください!

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「転職先の選択を失敗したくないなぁ」
「求人票は良さそうだけど、職場自体はどうなの?」
このように、今の職場より良い環境で働きたいと思うはず!

「転職したはいいけど、思ってたのと違う…」
「こんなの聞いてないよ…」
転職してしまってから、不満なところが多いと目も当てられません

では、転職に失敗しないためには、どこを確認すれば良いのでしょうか?

わたしは病院と調剤薬局あわせて4回の転職経験があります
その経験と教訓から、今回は病院の転職先で見るべきポイントをまとめました
特に、わたし自身が失敗した、ここを見ておけば良かったという経験を踏まえてお話します

この記事を読むことで、転職先の選定に役立つ情報が手に入ります
この記事は、病院に就職・転職する薬剤師を対象にしています

この記事は「職場見学」に行く前提で書いています

職場見学は、以下の2点が最大のメリットです
 ①職場環境が実際に見れる
 ②質問が十分にできる

1. 調剤機器

調剤するときのピッキングサポートシステム、錠剤分包機、散薬分包機
鑑査するときの散剤/水剤秤量鑑査システム、一包化鑑査システム、PTP鑑査システム
調剤機器は多数あり、業務を補助してくれます

見るべきポイントは、機器の「種類」と「古さ」です

〇どうしてここを見る?〇

理由は、「対物業務を効率化しているか」を確認するためです

病院薬剤師の業務は増加しており、対人業務にシフトしています
その時間の捻出に各施設は四苦八苦しているのが現状です
デジタル化・機械化は業務の改善手段のひとつです

また、人の目では見逃すことを機械がチェックすることで、インシデント低減に繋がります

よって、多種類の調剤機器の導入は、他業務の時間捻出やインシデント低減に注力しているかを確認することができます

注意点は、調剤機器はあるけど古い場合です
使い古された調剤機器はエラーや故障が多くなります
よって、逆に非効率となっている場合があります(経験済み)

〇わたしの失敗談〇

・機械が古いけど、動いているから調剤に支障はないだろう
・最低限の調剤機器(錠剤分包機、散薬分包機、アンプルピッカー)があればいいだろう

この考えが失敗でした

・20年以上前の古い機械 → 錠剤分包機が詰まりエラー頻発 → 調剤すすまず
・最低限の調剤機器 → 鑑査補助のシステムがないためインシデント頻発

総合病院なのに、このような職場もありました
何でも機械化すればいいわけではありませんが、総合病院では調剤システムと鑑査システムは必要と思います

調剤システムは、錠剤分包機・散剤分包機・水剤/散剤秤量機
鑑査システムは、ピッキングシステム・錠剤分包鑑査システム
この辺が揃っていれば、安心できるかと思います

また、あまりに古い機器をずっと使っている職場は、マイナス点でしょう

2. 職員の表情、雰囲気


職場見学の際に、なるべく多くの職員を注視してください
見るべきポイントは、「働いている職員らの顔と会話」です

〇どうしてここを見る?〇

理由は、「良い職場環境か」を確認するためです

働くときの雰囲気は大切です
職員同士で会話がなく、シーンと静寂な職場もあります
黙々と仕事をする場面もありますが、多少の雑談は職員間のコミュニケーションのために必要でしょう

まず何人かの職員の顔を見てください
半分以上が暗い顔や疲れた顔をしている場合は注意です

また、職員同士の会話も聞いてみてください
ずっとシーンとしている、話し方がきついなどがあれば、検討が必要かと思います
逆に、笑い声がある、あいさつされるなどのプラス面があれば、業務遂行には支障がないレベルと思われます

見学時だけで、職場の雰囲気を完璧に察するのは難しいです
ほとんどは入職して数カ月しないと、人間関係はわかりません
よって、業務に支障がない雰囲気を確認するくらいになるでしょう

〇わたしの失敗談〇

ここでは失敗談は無いので、ちょっと違う経験談をお話します

ある病院に見学に行き、まず薬剤部長にあいさつをしたときです
「あぁそう、見てってね」のように、結構素っ気ない対応で、少し「おや?」と感じました
職場自体は、職員同士が楽しそうに働いていたので採用試験を受けました
結果、落ちました
実は、欲しい人材は新卒だったと後から知りました

このように、多少なりとも態度に出る場合もあります
会話、雰囲気を確認しましょう

3. 給与

給与は補助や福利厚生など確かめるところは多いです
書く内容が多くなってしまうので、特に注意して欲しいところをお話します
見るべきポイントは「諸手当」です

〇どうしてここを見る?〇

理由は、「月数万円の損をする可能性」があるためです

実際、「諸手当 4万円」のように書かれていることがあります
諸手当の具体的な内訳を確認してください
ひっそり残業代が含まれていることがあります
残業あれば4万円ですが、なければ2万円になったりします

〇わたしの失敗談〇

諸手当に残業代が含まれることを知らなかった → 予定していたより給与が少ない → 生活が苦しくなる
新人の頃で基本給も低い上、奨学金返済と車のローンでカッツカツでした(車が必要な田舎)

現在は求人票に詳しく載せる傾向にありますが、あいまいな項目は明確にしていきましょう

4. 認定者

がん薬物療法認定薬剤師・感染制御認定薬剤師・精神科薬物療法認定薬剤師など、現在は数多くの認定が乱立しています
ホームページで何の認定を、何人が取得しているか確認しましょう

〇どうしてここを見る?〇

理由は、「認定取得に理解があるか(費用補助や取得に積極的か)」確かめるためです

まず、取得している認定の種類が多いこと
これは、認定取得に積極的であるかを判断できます
現在はチーム医療が盛んになり、精神科や慢性腎不全、周術期など多種多様なチームが結成されています
業務のために認定者が必要 → 認定取得に積極的 → 取得のチャンスとなります

感染やがんは人気があるので、大抵の施設には取得者がいると思います
精神科、腎臓病、救急などの幅広い認定取得者がいるとポイントが高いでしょう

次に、認定者の人数です
がんの認定は3人、感染の認定は2人…、のように見ていきます
認定者が偏っていると、取りたい認定が取得できなかったり、他の(興味がない)認定を取得させられたりされることがあります
希望する認定の取得人数が多いときは、取得は可能か、現在はどの認定が組織に必要か、見学時に聞いてみましょう

〇わたしの失敗談〇

わたしは、認定取得してからの転職でした
ですので、更新は自分でやればよいだろうと思っていました

しかし、医療薬学専門薬剤師は、制度が変わって「暫定認定」の状態でした
よって、1年間の研修が必須です
その研修先を探すのが大変になってしまいました
できれば、研修認定の施設であればよかったなと、少し後悔しています

5. 調剤業務

薬剤師の基本的業務である調剤についてです
ここでの見るべきポイントは、「鑑査・調剤の統一性」です
言い換えると、どの人が鑑査・調剤しても、違いなく同じ結果になるかを確認します

〇どうしてここを見る?〇

理由は、「人によって鑑査・調剤方法が異なると、過誤のリスクとなる」ためです

まず、鑑査の統一性
これは、鑑査する項目が決まっているかを確認します

具体的には、オランザピン錠の処方で糖尿病の既往を必ず全員が確認しているか、腎機能をみるべき薬剤は薬剤部として決めているか、などです
例えば、バラシクロビルは腎機能によって減量しますが、薬剤部としては必ず確認すると決めていないとします
すると、腎機能を確認する人としない人に分かれ、鑑査の統一性が担保されません
鑑査でどこまで見るかは、ある程度は統一する必要があります
大半を個人任せにしている施設は注意です

ほとんどの施設は、院内処方せんに鑑査内容を併記したり、鑑査項目をファイリングして電子カルテの近くに置いていることが多いです
そこを確認してみましょう

〇わたしの失敗談〇

鑑査・調剤方法は人によって異なる職場でした
具体的には、トルバプタンの血清ナトリウム値を確認する人としない人がいたりです

また、問い合わせが来たときも、薬剤部としての対応を決めていないので、人によって回答が異なることがありました
さらに、問い合わせの資料がバラバラに置かれているため、探すところから始めなければいけない職場でした

回答用資料や問い合わせ集が一か所にまとめて置いてあり、鑑査内容が人によって違いがでない対策をしているか、確認すると良いでしょう

6. 病棟業務

病棟での薬剤師の業務を把握しましょう
病棟業務を希望する薬剤師は多く、チーム医療や患者さんと深く関わりたいと希望する方が多いでしょう
それを重視する場合は、逆に「病棟での対物業務はどれくらいあるか」を見ましょう

〇どうしてここを見る?

理由は、「対人業務にどのくらい関われるか」を見るためです

まず、病棟の対人業務とは、患者指導・医師や看護師との協議
病棟の対物業務は、持参薬鑑別・配薬カートのセット・常備薬の期限確認・退院指導の準備(お薬手帳シールの作成など)などがあげられます

対人と対物のどちらに比重が傾いているか見ます

対人業務は、患者指導がどのタイミングで実施されているかを見ます
入院時と退院時の指導は基本として、入院中は経過フォロー的な指導も行えているか確認します
施設によっては、入院時と退院時しか介入しないところもあります
個人的には、退院までの「過程」に介入することが重要と思っています
患者さんにどのくらい会いに行っているかが、対人重視かの指標になるでしょう

持参薬鑑別・退院指導の準備などの対物業務の時間が多く、患者さんに会いに行けるのは入退院時くらいなのであれば、検討事項でしょう

〇わたしの失敗談

「どの病院でも、病棟業務はそう変わりがないだろう」と思っていました
しかし、入院時の持参薬確認・入院初回の薬剤指導・退院時指導の準備・退院時の薬剤指導がほとんどの業務でした
つまり、入院中の経過フォローや指導がほとんどされていませんでした
さらには、お薬手帳に貼る退院時の薬剤情報シールは、全て手打ちで入力するというアナログっぷりでした
他の病院は退院処方と一緒に薬剤シールが自動で印刷されるところもあります

このように、病院によって病棟業務の中身は全然異なります
患者や医療スタッフと深く関わりたいときは、確認してみてください

7. 外来業務

外来患者さんに対して、薬学的管理を行う薬剤師外来が広がっています
がん領域では医師の診察前に薬剤師が副作用評価したり、手術入院の前に常用薬の休薬を確認したりと、多岐に渡ります
また、外来で抗がん薬点滴をする化学療法室でも、薬剤指導などをしている場合もあります

見るべきポイントは、「外来業務は何種類あり、どの程度まで」実施しているかを見ます

〇どうしてここを見る?

理由は、「忙しさと介入度を確認」するためです

ただでさえ病院薬剤師は少ない人数で仕事を回しています
外来業務に人手が取られれば、病棟と兼務するなど多忙な場合もあります
薬剤師外来が多数(がん、術前、吸入など)ある施設は、外来専任か兼務か、外来担当は休みを取得できているか、を確認しましょう

しかし、外来患者さんとは長期に関われる、情報がわかっているので入院時により深い介入ができるなどのメリットもあります
また、認定取得される方は、症例を集めやすくなります

他に、外来の化学療法室では抗がん薬調製のみの場合があります
つまり、患者さんの点滴中に指導できていない施設もあります

〇わたしの失敗談

がんの薬剤師外来に関わりたくて、実施している施設に入職しました
しかし、どの程度まで介入しているか確認しませんでした
結果、薬剤指導の実施は初回と2回目のみでした
また、外来化学療法室への点滴中の指導もなく、あまり患者に関われない状況でした

いろいろ書きましたが、自分が譲れない事と許容できる事をはっきりさせてから見学に行くことをお勧めします

わたしの場合は、転職を4回しても100%満足する職場はありませんでした
ただ、十分に情報を収集することで、満足度を上げることができるでしょう

少しでもご参考になれば幸いです


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